「ねえ、さぶやん。先週は3レース中2レースを当てたけど、
配当はふるわなかったわね」
「わてとしたことが面目なかったでんな。完全な読み違いでんな。でも、龍さんとちごうて丸ハズレっちゅうわけではおまへんで」
「そういえば、龍ちゃん。まだ1回も当たっていないわね」
「お恥ずかしいでござる。大口をたたいておきながらの体たらく。このままでは、師匠の顔に泥を塗るようなもの。いっそ、腹かっさばい てお詫びでも」
「それがよろしゅうおまんな」
「何言ってるのよ、龍ちゃん。龍ちゃんの予想は、若い子のあいだで評判なんだから」
「そんなバカな」
「ほんとよ。龍ちゃんの予想をお財布に入れて持ち歩いている子だっているんだから」
「世の中には、変わったお方もいるもんでんな」
「拙者の予想をそんなに大事にしてくれてるのでござるか」
「もう大人気なんだから」
「かたじけのうござる」
「所詮、素人のたわごと。今月もあと2週しかおまへんのや。あんさん、そろそろタップしてはどないでっか」
「何を申すか。勝負は下駄をはくまでわからんでござるよ」
「はっはっは。師匠もろとも、ぶったぎってもうたりまひょか」
「そういえば辰先生もスランプよねえ」
「心配は無用。師匠は1ヶ月のトータル収支では、必ず浮上するでござる」
「でも、今週は1レースだけの予想だし、重賞だし、買い目も2点だけよ」
「そこが師匠の思い切りの良さ。ちまちま的中率を気にしながらの勝負など、なさらぬお方なのでござる」
「無謀なだけやおまへんかな」
「それより、龍ちゃん。今週の予想は自信あるの」
「読売マイラーズCは荒れると見ての一発狙い。皐月賞は軸を2頭に絞ってのちょい荒れ狙いでござる」
「中途半端でんな。わてかて読売マイラーズCは荒れると見てまっせ。馬単でも万券がでそうな気配や。こんな荒れそうなレー スは一か八かの勝負でんな。軸を2頭にしてしまっては穫れまへんのや。軸1頭で馬単マルチが正解でしょうな。3連単で当て ようおもたら、辰先生やおまへんが、よっぽどの点数を買わなあきまへんのや。確か、8万なんぼとかおっしゃってましたな。かたや、皐 月賞は堅いレースでんな。ピサとローズが2頭とも来ないなんちゅうことはおまへんわな。わって入れる実力の持ち主は、ヒル ノダムールかアリゼオぐらいのもんでっしゃろ。今の状態で比べればアリゼオの方が上でっしゃろな。それにしても上位2頭の壁はあつう おまっせ。馬券の買い方としては、わての買い方が正解でんな。ただ、わてらは常勝を義務付けられたプロ軍団。生活もかかっ てるさかい、どうしても手堅い買い方になってしまいまんな。怖いのは辰先生のような生活のかかっていない素人はんの思い切りの 良さでんな。このレースがワンツーでフィニッシュすれば、わての馬券はもちろん当たりますが、辰先生の配当とは桁が違いまんな。龍 さんのは当たったところで2~3万、わて
の勝ちは動きまへん。そういう意味では、辰先生は勝負手を放ってきはりました。わてらプロが負けるとしたら、こういう素人 はんなんでっしゃろな」
「さぶやん、何か説得力があるわね。先生もさぶやん恐るべしと言ってたけど、さぶやんも辰先生には一目置いてるんだ」
「そやさかいに勝負に来てまんのや。敵は龍さんやおまへん。辰先生でんな」
「ううむ。言わせておけば暴言のかずかず。今週こそは、おぬしの鼻をあかしてやるでござる。拙者の予想を大事に持ち歩いてくれている 人たちのためにも」
「あっ、龍ちゃん。そんなにがんばんなくてもいいのよ」
「今週こそ、今週こそは」
「龍ちゃんの予想は、交通安全の御守りなんだから」
「そこまで信じていてくださるとは、かたじけない」
「あーあ、言えなくなっちゃった(絶対当たらないからなんて)」
「何がでござるか」
「ううん。何でもないの。さあ、今週も張り切って適当にいくわよ(笑)」
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